スプリング・エフェメラルというものがあります。英語表記だとSpring Ephemeralです。直訳すれば、春のはかないものという意味になるそうです。春先の雪解けを待って、一斉に花を咲かせ、実を実らせます。夏になる頃には枯れてなにもなくなってしまいます。このような植物をそのように呼んでいます。
代表的なものとしては、カタクリやニリンソウがそれにあたります。今回の旅行の目的だった雪割草は、夏でも葉を残しているので、仲間に入れてもらえないようです。
実際に、インターネットなどで用例などをみていると、元の言葉が示しているものとは違って、かなり日本的に解釈が広がっているような気がします。ギフチョウのような蝶類や雪割草が入っていたりすることがあります。
日本語訳としては「春植物」というのが正しいようです。「春の妖精」といういいかたもありこちらの方が一般的に使われています。場合によって、雪割草が入ってくるのは、この「春の妖精」という言葉が持っている雰囲気によるものなのかも知れません。
ここでは、日本的に解釈された(つつある)ものを「春の妖精」と呼ぶことにします。雪割草は「春植物」には該当しませんが、「春の妖精」には入れることができます。どこまで含めるかは、雰囲気があっていると思えばとよいうことにしておきます。ギフチョウについては「春の女神」という言葉が使われるようなので除いておきます。元の英語は厳密な意味で使うことにした方がいいでしょう。
今回、3ヵ所の雪割草の群生地をまわりました。それぞれに、特徴があってなかなか興味深いものでした。
まず、大崎雪割草の里です。ここでは、雪割草の復活に力を入れているようすがよくわかりました。地域の活動の中心として雪割草と取り組んでいるようすが印象的でした。
2番目は越後丘陵公園です。ここはフラワーパークとして整備中といった感じです。どこの国営公園でもいろいろな花を集めているという点で似たり寄ったりかなとも思いました。地域の独自色を作るということで、一画に雪割草を増やして、群生地を作っている途中という印象を受けました。雪割草は花が咲き始めるまで長い年月を要します。まだ始まったばかりのようでした。
最後の雪国植物園です。どちらかというと里山の風景がみられたのが印象的でした。里山とその自然というのがコンセプトにあるように思えました。どちらかというと雪割草はその一部です。場所によってどんな花が咲くのかというのが何となく理解できたようです。
元の自然を復元ということで、外来の植物を持ち込まないなどの方策は徹底しているようです。このあたりの考え方は、越後丘陵公園と正反対のようです。
スプリング・エフェメラルは、春先に葉を落とした木々の間に差し込む光を利用して成長します。木々が葉を広げた夏になると光が届かなくなるので、活動を停止します。これを繰り返すことで年々大きくなり、やっと花を咲かせるのに至ります。落葉樹林帯に咲く花たちといっていいでしょう。
人間の手が入ることで二次的に落葉樹林帯のようになった場所があります。それが里山です。落葉樹が増えるだけでは、花たちにとっては困った問題があります。強い夏の日差しは落葉樹の葉の間を通りぬけて差し込んできます。これでは下草が繁茂する原因になります。これらも刈り取られて、初めて春の花たちが咲き誇れるようになるでしょう。こうなると、このような花はスプリング・エフェメラルではなく春の妖精といった方がいいようです。
さて、今回の旅行記のタイトルです。雪割草を見に行くということで、雪割草を入れようかな。そのままでは足りないので街道とつけて雪割草街道としたらどうだろうか。これでは地元がつけている名前そのままです。これは避けたいものです。
次に候補にあがった言葉が、スプリング・エフェメラルです。文字数が多すぎます。英語でも長いし意味がわからなくなります。春の妖精としたらまだすっきりします。雪割草が入ってこないという問題も回避できます。最悪字の通りといってごまかすこともできます。後をどう続けるかになってきます。後ろに何か続けたいところです。単純に「春の妖精を探して」となってしまいました。
雪割草以外にも春の妖精達を始めいろいろな花を見ることができました。何となく、落ち着いたタイトルの気がします、どこにいったのかわかりづらいのはあります。これくらいは許容範囲でしょう。
ここで問題です。越後丘陵公園には原種のシクラメンがありました。春になると花を咲かせて、夏になると葉を落とします。これは、スプリング・エフェメラルでしょうか。チューリップやスイセンといった花はどうでしょう。
シクラメンは、冬に雨が多く夏にはほとんど降らないところで育っているようです。夏場は、暑いのでそれだけで水分を使うのに、雨も少ないとなると休眠した方が有利になってきます。このような気候のところでは、冬から春にかけて花を咲かせて夏は休眠するという植物が多いようです。シクラメンはこのような植物です。
夏場は涼しいところに置いて、適度に水を与えていると、枯れることなく夏をすごし、冬の初めには花をつけるようになります。真冬には花はつかないようです。春になって暖かくなり始めたらまた花を咲かせます。普通は夏の管理が大変なので、水を与えずに枯らせてしまいます。この方が夏を越しやすいそうです。この場合は、花の時期が遅くなり、春に咲くだけとなってしまうことが多いようです。
原産地は地中海沿岸地域のようです。この付近を原産地とする植物は同じような特徴を持つようです。フリージアやスイセン等がその例です。冬に雪をかぶるような寒いところでは育ちにくいものが多く、スプリング・エフェメラルというには難があります。
<天気について>
出発前は、天気か崩れるという予報でした。帰る日の夜には、新潟県北部では雪が降るとの予報も出ていました。天気図を見る限りでは、どうしてそのような予報になるのかは理解できませんでした。
日本列島南岸に前線が停滞していて、日本海に高気圧があります。普通なら、移動性高気圧に覆われて、それほど崩れないと考える天気図でした。
大崎雪割草の里の出発直前に降りだした雨に対しては、寒冷前線による雨だと感じました。そのため、雨は30分ほどでやむと思っていました。確かにその通りになりました。
寒冷前線の通過から次に起こると予想されるのは、気圧配置が冬型へと変わっていくことです。だいぶ暖かくなっているとはいえ、冷たい空気が流れ込んでくると、日本海の海水で暖められ、大雪をもたらすときと同じパターンになります。
宿ではロビーでパソコンが使えるので、インターネットをつかって確認するました。たしかに寒冷前線が通過していました。日本海の海岸線付近に小さな低気圧があるので、里雪型になります。平野部で降水があります。気温の関係で雪ではなく雨になるでしょう。
変わっているのは、日本海の真ん中に前線をともなわない低気圧があることです。寒冷低気圧のようです。寒気をともなっています。新潟県では、低気圧をまわる風が西風になって吹きます。局所的に冬型が強まったのと同じ効果があります。雨が強くなるのは新潟県に限定されそうです。
天気図を読み誤ったのは、低気圧高気圧の成長のようすを考えなかったからです、3月末頃では、東に向かう高気圧は衰退していき、低気圧は発達していきます。
日本海にいた高気圧は弱くなります。高気圧は、南北に長く衰退する兆候を示していました。一般に移動性高気圧と呼ばれるものは東西方向に長いという特徴があります。
高気圧の後方に低気圧は書かれていませんでしたが、広い範囲で気圧の低くなっているところがあります。ここから低気圧が発生して大きくなっていくことは予測できることでした。等圧線が引かれていないので気がつかなかったようです。
最近は気象庁の天気予報の精度が上がってきました。天気図を見て判断するほどのこともなくなりました。そのせいで、あまり天気図を見なくなりました。みていないと、見落としが出てくるようです。これからもちょくちょくとチェックはしたいものです。
2019年11月30日
春の妖精を探して 21 感想・余談など
posted by ヨッシン at 23:47| 旅行記