2021年01月19日

共通テスト「地学」の問題について

 昨日は、「地学基礎」の問題についての解説をしました。今日はその続きということで「地学」の問題に触れることにします。この中に気になる問題があったので、きょうはこの部分について掘り下げて答えることにします。
 該当箇所は、第3問の南極の岩石についての問題の問2です。確認のため問題文のコピーを載せます。
共通テスト地学問題第3問問2

 正解として示されているのは、「B紅柱石が珪線石に変化する」です。
 岩石の種類は、その特徴から片麻岩と読み取れます。高温低温型の変成作用によってでき、その過程で紅柱石が珪線石に変化します。そのように記述されている教科書もあります。ここで気になるのは下線部(a)の文章です。以下がその文章です。
共通テスト地学問題第3問問2

 記述を確認すると、約7×10Paで温度が約850℃に達する変成作用でできたと書かれています。
 一般的な片麻岩(高温低圧型変成岩)に比べて圧力が大きいような気がします。確認のためにAl2SiO5鉱物の生成条件を見直してみます。実教出版地学の教科書からのコピーです。
Al2SiO5相平衡図

 図中には、広域変成岩の変化の過程が黒矢印で書かれています。@が低温高圧型の変成作用で、Bが高温低圧型の変成作用です。図を見る限りでは、Bでは紅柱石が珪線石に変化しています。
 ここで、南極の片麻岩のできかたを考えてみることにします。図には下線部(a)に書かれている温度圧力を赤×印で入れています。印の場所はAの矢印の先わずかに上の所になりそうです。図の説明では、Aの矢印は中間型の変成作用と書かれています。
 実際の経路については、近くで見つかる変成度の異なる岩石のデータを集めておこないますが、データがないので、一般的にいわれているAの経路とその延長で変成作用が起こったと仮定します。赤×印に達するまでは赤矢印で示します。
 線が通っているのは、藍晶石の領域から珪線石の領域になります。つまりこの圧力温度からいえるのは、紅柱石から珪線石に変化したのではなく、藍晶石から珪線石に変化したといえます。
 従って、「B紅柱石が珪線石に変化する」は誤りと判定できます。

 それでは正しい答えはないのでしょうか。ここでも別の問題があります。最近の教科書の記述では広域変成作用で石灰岩が変成するとどうなるかが書かれていません。古い教科書には結晶質石灰岩になると書かれていたものがありました。
 ネットで、飛騨変成岩または飛騨変成帯と結晶質石灰岩で検索をかけるといっぱいヒットします。一部、石灰岩と記述する学者もいるようですが、結晶質石灰岩というのが一般的なようです。厳密には、提示されている圧力・温度条件でどうなるかはわかりませんが、結晶質石灰岩の可能性は高いでしょう。
 だとすると、「A石灰岩が結晶質石灰岩(大理石)に変化する」も誤りと断定できません。問題文からは途中でどういう変化が起こっていたか読み取れるからです。少なくとも一般的にいわれている事柄を用いてBを正解にする思考レベルではAは正解にしないといけないでしょう。

 ここででてきたAl2SiO5鉱物の相平衡図にしても、普通はこの図が示されていて、そこから温度圧力がどうであったかとか、この圧力温度だとどんな鉱物になるかを答える問題がほとんどです。図も示されずにいきなりどうなっているかという問題が出題されると受験生も戸惑うでしょう。
 少なくともいえるのはこの図は完璧に覚えて置くべき図ではないということです。図もなしに三重点の温度圧力はいくらですか等と聞くのは酷というものです。三重点の条件はこの問題を解く上での最低限の知識になります。

 これは、出題ミスとかあるいは解答の誤りといっていいレベルだと思っています。


posted by ヨッシン at 23:53| 雑記